田羅義史YOSHIFUMI TARA
おかしな表現なのかもしれないですが、魔法みたいなもの作りたくて、ディズニーランドのような夢の国、物語的なイメージの世界の魔法の国ではなく、現実を変える物を作りたいと思っています。

上條:まずはプロフィールから教えてください。
田羅:芸術系を目指すきかっけとなったのは高校の先生の指導のおかげです。その前までは工学系、電気系か建築系と考えていました。美術作品を見ることも好きで受験の内容も加味して、僕の本当に表現したいことは難しい数式を使った物作りのような既存のテンプレートにあるものではないと感じ美大を目指しました。
上條:絵を描くよりは、物を作るような表現方法の方が合っているということですか?
田羅:そうですね。絵を描くのはいい表現手法ですが、僕にとっては小説や物語を書く感覚に近く、それよりも自分だけじゃなくて周りも変える作品を作っていきたいという思いが強かったのです。 よく鈴木先生の作品の中にもそういうことを感じます。
上條:それで空デのいろんな人がいる中で鈴木ゼミに来たのは、何でも出来るからみたいな理由ですか?
田羅:そうですね。ひとつの表現手法に凝り固まりたくないことや人を巻き込むような物をつくりたいから、という理由もあります。最近では、おかしな表現なのかもしれないですが、魔法みたいなものを作りたくて、ディズニーランドのような夢の国、物語的なイメージの世界の魔法の国ではなく、現実を変える物を作りたいと思っています。
上條:アートは本当に必要なところに届いているのか?と考えるとアートっていうのはアート好きのためのものになっているのではないかという疑問からでしょうか。鈴木さんも、作品と鑑賞者との境界についてはテーマになっていますよね。
鈴木:そう。やっぱり不意打ちしないと。馴染んだものどうしにはものすごいバリアがあると思う。ある作品を素晴らしいって思っている人同士が集まったところで、その見方にはあまり変化はないですよね。
上條:じゃあゼミ展の話に移りますね。ゼミ展をしてみて最終的な反応や、新たに気づいたことはありますか?
田羅:魔法みたいなデザインをしたいって言ったのですけど。そこから生き物に関して『生きている』こと、『死んでいる』こと、目が死んでいるという表現があるから、『生きている』つもりでも『死んでいる』ことがあるのではないかと思うのです。寝ているのもその感覚に近い気もしますし。
死生観に興味があって、生死をテーマにしたデザインとか、体験を形にして行けたらいいなって思っています。
上條:なるほど。
鈴木:本当に死ぬということではなくて、体は生きているのに、生きていることにボケているということ?
田羅:はい。そうした感覚を目覚めさせるという意味もありますし、鈴木先生が前におっしゃっていたのですが作品を作ってみて、前までの自分がものすごく劣化していたのだと気づいた。と、そういう感覚を多くの人に抱いてほしいのかも知れないです。
鈴木:自分自身に対してそれが必要だったのだなって思うことが結構多い。作ってみると。それが自分に必要なものであって、他の人にも必要かどうかは体験してもらわなくては分からない。そんな状態かな?
田羅:自分自身に必要な物っていうのも大抵は現実世界にあると思うのです。
その穴に潜って自分にしか出来ないっていうことがまだある可能性も否定できないわけじゃないと思います。この間、新しい元素が見つかったように。 ぼくは自分にしかできないことをしたいと思うんです。それが自分の生まれた意味になってくると思います。だから結果が出せても出せなくてもそういう事がやりたいです。
鈴木:(カブトガニ鞄を指して)このプロダクトというか一点物をどう見せるか、使うかということはもう少し考えても良いのかなと思います。場と絡んでくるともっと見方が変わり、広がっていくと思います。
田羅:その絡みや、発表の仕方みたいなものは最近まだ全然できてないと自分でも感じています。
鈴木:アートやデザインのコンペも限られているし、用意された発表の場が減っているなか、自分が作ったものを他者とどのようにフィットさせるかも重要なことです。
田羅:そうですね。
鈴木:田羅君は、空気を読もうとしないところがあって、そんな自分と他者をどうフィットさせるか、ということを独自に考えてみたらいいと思う。
上條:せっかくそのような劇場型ではなく日常に入り込んだデザインをするのであれば、もう少しそこについて考えて欲しいですね。
田羅:そうですね。発表等はしないで日常で話題性を生んでいくという活動方針でも良いかもしれないですね。
鈴木:面白いものは必然的に広がっていきますから。
田羅:どうですかねー。
上條:その積み上げみが卒制に表れてくるのかもしれないし、でもやっぱり今からできることもあるでしょうし。
鈴木:卒制で一点すごい作品をつくるのではなく、田羅くんは普段からやらないと。
上條:まぁ結局普段の続きみたいなわけだからね。別に卒業制作で人生が終わるわけじゃないですから。
鈴木:田羅くんには現時点で意味が決定していないものをどんどん作ってほしいと思っています。
上條:うん。どんどん作って欲しい。