上野未由有×松本典子
行った国の路地は見て回るようにしてます。日本では絶対経験できないその国独特の景色とか匂いが強く感じられて新鮮なんです。
松本:小さい頃から絵を描くのが好きで最初はデザイン系の専門学校に行ってみたいと思ってたんです。大学を選んだ一番のきっかけは中学の美術の先生でした。技法も教えてくれていたけど、デザインの考え方も教えてくれて、大学も面白いのかもしれないと思ったんです。あと親が建築関係の仕事をしていて小さい頃からインテリア関連に関わることが多く、インテリアの専攻があるところで空デ見つけました。舞台について学べるのも魅力的でした。親が日本舞踊をやっていたり、趣味で自分もやっていたので舞台にも関心があったけど、中学の先生のことを思い出して考え方を改めた結果、鈴木ゼミに入りました。
上野:私も小さい頃から絵を描くのが好きでした。でも今までの学生生活では同じように絵を描くのが好きな人はあまりいなくて。特に高校では美術が好きなことを馬鹿にされたことがあって、それがショックで環境を変えたいと思い、美大を考えました。それでいくつか美大のオープンキャンパスや文化祭をみてみて、武蔵美の雰囲気が好きだったのを覚えてます。武蔵美には小さい頃から好きだった漫画の作者が在学してたことも武蔵美を選んだ理由です。絵を描くこと以外にも、とにかくモノ作りが好きだったのでカリキュラムをみて幅広くいろんなことを学べると思い空デに入りました。その中でも言葉や精神的なものにも興味があったので鈴木ゼミを選択しました。
松本:MY DESIGN HISTORYは結構削って書いたんですけど、幼少期のことが多く関わっている気がします。自分が大切にしているものとか絶対忘れないものを書き出せたように思います。これを見て思い出すことも多かったです。
上野:おじいさん、喫茶店やってたんですね!
松本:今はないんですけど昔はロケ地とかにも使われたりしてたんです。ウッド調でサイフォンが並んでて魅力的な内装のお店でした。タバコとコーヒーの匂いがしてパチンコ帰りの人、二日酔いのお客さんとか、子供の自分にとっては不思議な場所だったのを覚えてます。
上野:私の実家も居酒屋だからその感覚わかります!小さい頃に大人の世界に入った時の違和感みたいなの。
松本:変な感じしますよね、大人の世界にランドセルが置いてあったりとか…。
上野:大人から見ても不思議ですよね(笑。喫茶店はいつ頃閉めてしまったんですか?
松本:私がコーヒーの美味しさがわかる歳になる前にお店を閉めた後、祖父は亡くなってしまって…父は祖父が作るコーヒーが一番美味しいって言ってました。私も飲んでみたかったです。
上野:そうなんですか…喫茶店があった場所には違うお店が出来たりしましたか?
松本:海鮮料理のお店になりました。洋風から和風なお店になってしまって面影もなくなってショックで…でもお店を閉める前にカメラを買って写真に残すことが出来てよかったです!それに今も祖父の喫茶店を覚えてる人がいて嬉しかった。
上野:私のMY DESIGN HISTORYは、時代を感じるものが多いですかね…なんていうか懐かしいものが好きかもしれないです。あと色。幼少の頃に強く印象に残って今の自分に強く影響してるものが多いと思いました。
松本: 確かに色が綺麗なものが多いですよね。

上野:小さい頃に海外に住んでて、当時みてた景色の色とかに影響されてるのかもしれないです。特にこの絵本ですかね…英語が全くわからなかったんですけど色合いと、オーバーオールを着たお姫様がずっと印象に残ってます。
松本:子供向けの作品で内面的なギャップが表現されてることはあるけど視覚的なギャップは珍しいかもしれないですね。
上野:確かに初めて感じたギャップだったんだと思います。
松本:海外旅行に行っているイメージがあるんですけどその中で何か続けてることってありますか?
上野:MY DESIGN HISTORYにも載せてたんですけど、行った国の路地は見て回るようにしてます。日本では絶対経験できないその国独特の景色とか匂いが強く感じられて新鮮なんです。
松本:なるほど…そういうのって私たちがどこかで求めている非日常の世界なのかもしれないですね。現実よりもリアルな。
上野:確かにそういう世界を求めてるから旅行も好きだし、映画とか漫画も好きなのかもしれないです。
松本:私は集中すると前にのめりこんで何も聞こえなくなるタイプで…そうやって没頭してしまうようなものに興味がありますね。特に小学校の頃は読書に夢中になっていてその中でも偉人伝が好きでした。ポケット文庫から出てた偉人伝をまっ茶色になるまで読んでたな。変わった人だけど昔の人も意外と普通なんだなって。
上野:昔の人なのに身近に感じられて面白いよね。
松本:不思議な感覚になります。本はやっぱり私にとって重要なものかもしれないです。でも高校の時に一回本を読むのやめてしまって、それは後悔してます。
上野:私はたまにしか本読まないんですけど、自分の感情も上手く言葉に出来ない中で的確な言葉で表現されたその人の感情を受け入れるのに凄く疲れてしまって…映画とかもそうかな。重い話とかだと一週間は引きずります(笑)。
松本:私も梶井基次郎の檸檬を読んだ時はかなり大変でした…今でもドキドキします。
上野:疲れちゃうんですけど心が落ち着いてる時は結構重い話とか見たくなります。その時の気持ちでみたいものが変わるかも。
松本:時には客観的になることも必要なのかもしれないですね。
上野:松本さんはこれからどんなことをやっていきたいですか?
松本:私はやっぱり他の人も没頭してしまうような何かができたらいいなと思います。没頭できる世界は人それぞれ感覚が違うのかもしれないし、一人一人の時間を大切にするものに注目していきたいです。
上野:私は、感覚的なことなんですけど、こういう風に好きなものがあってそれを形を変えて自分なりに表現する術っていうのは自分の人生の中で得た宝物みたいなものだから、どんな形であろうとこれからも形に残すことをしていきたいなって思います。
松本:好きなものを自覚していない人もいたりする中、こんなに書き出せることって素敵な事だと思いました。
上野:確かに。好きなものはあるけどただ、好きっていう人も多いと思う。そこから形を変えて残すことが出来るのはありがたいことなんだと思います。そういうことを続けていきたいですね。