松原実香MIKA MATSUBARA

私は時間に縛られるのが嫌なのですが、それなのに時間を気にしてしまっている自分がいて、これで何かできるのではないかと思ったのがきっかけです。

《確認》2017 3年次ゼミ展「SAMPLING 日時」

上條:なぜ美大に行こうと思ったのか教えてください。
松原:高校時代に、K-POPが大好きで、ミュージックビデオの舞台セットメイキング映像を見て、できれば韓国で舞台セットをつくる仕事につけたらいいなと思い始めたのがきっかけです。

上條:大学を選んだときに、なぜ武蔵美の空デにしようと思ったのですか?

松原:舞台美術の仕事に憧れたあとに、インテリアも好きになって、自分の部屋を模様替えするのが好きで、インテリアと舞台美術を両方学べる場所が空デだったからです。

上條:武蔵美に入ってどうでした?

松原:自分と比べてできる子が周りに多くて、驚きが多かったです。

鈴木:できるというのは例えば何ですか?

松原:絵を描ける人がたくさんいるし、高校時代はそう思ってなかったので……。

上條:美大受験の予備校は通っていましたか? そのときはどう思いました?

松原:はい、通っていました。そこの予備校の中だけと考えていたので、大学に入ってたくさんの美大生がいると考えると、規模が違うなと思いました。高校のときは絵を描けて褒められていたけど、大学にいけばそれは当たり前のことなので、最初の頃は少し戸惑いはありました。

上條: 3年生になって鈴木ゼミを選んだ理由は何ですか?

松原:初めはインテリアのゼミに入ろうと思ったのですが、模型を作るのが好きという理由だけでは、入ってもついていけないと思いました。そこで、枠にとらわれず、自分の考えを整理したり、自分のやりたいことを見つけ出すことができる場所はどこかを探したら、鈴木ゼミに辿り着きました。

上條:鈴木ゼミで何をやりたいと思いました?

松原:まだ明快ではないですが、前期のZINEの課題で、自分の好きなものやことをテーマに制作することを通じて、なんで好きなんだろうという中身を探ることに気がつくことができました。

鈴木:松原さんは運動は得意ですか?

松原:苦手ではありません。中高のとき卓球部に入っていました。それと、走るのも好きです。

鈴木:走っているとき、自分の足が速いという感覚は覚えてますか?

松原:相手を抜き去ってゴールしたときの感覚が爽快でしたね。

鈴木:自分の体で知っているその感覚で美大の中で何かやりたいことが見つかったらいいなと思う。ゼミの中で卓球が一番という特性を再認識するだけでも、何か手応えを思い出せると思います。

上條:例えば卓球の中に、何か日常を見直す部分があるのかないのかを考えてみるとか。自分の好きなもの得意なことの要素を分解してみると、何の要素が残るんだろうというのを考えてみる。そしたら、松原さんの好きなものの魅力を伝えるときに、ここが面白いんだというのを少し違うことを通して言うと、その人に伝わりやすいかもしれませんね。ただ自分の好きなことが何かを確認するだけじゃなくて、ゼミ展でやっていたゲームのプレイ時間を目に見える状態にしたことで、周りから見た人はすごいやってるなっていうのがよくわかったと思います。

鈴木:そうですよね。自分の示したものが人にどのくらい伝わるか、客観的な視点を探るための目安や手応えを掴むことが大切ですね。
上條:見るものの物差しを変えてみる。自分の好きなものをどうやって伝えるか。対象物をちょっと遠くのものと結びつけることで、その対象はより他の人にも伝わるようになると思います。そういうところを強めていってほしいなと思いますね。卒制のヒントにも繋がると思います。

《確認》2017 3年次ゼミ展「SAMPLING 日時」

鈴木:SAMPLINGで展示したiPhoneの時間だけを抽出したものは好評でしたね。

松原:意外だったので驚きました。

鈴木:その「SAMPLING日時」は、なぜやろうと思いました?

松原:みんながいつも持っている一番身近なものがスマホだと思って、自分の日常を振り返ってみると、時間をとても気にしているなと感じました。私は時間に縛られるのが嫌なのですが、それなのに時間を気にしてしまっている自分がいて、これで何かできるのではないかと思ったのがきっかけです。

鈴木:実際につくってみてどうでした?

松原:1日の中でスマホを触ることも多いし、時間を確認するだけでもこんなにスマホを開いているのか…と。

鈴木:たしかに、自分がスマホを見るという行為を少し引いて捉えること自体がSAMPLINGなのかもしれません。多くの人が気になった作品に選んだのは、きっと松原さんの体験がシンプルに落とし込めたからですね。

《確認》2017 3年次ゼミ展「SAMPLING 日時」

上條:これから4年生のゼミ展や卒制に向けて、こういうところが苦手だからこれをやりたい、これが得意だからこれがやりたいというのはありますか?

松原:3年生前期でインテリアコースを取っていて、模型の机や椅子などの小さなものをつくるのが楽しいと思えたので、舞台などの大きなものではなく細々としたものをつくりたいとは思いました。

鈴木:つくる上で心がけていきたいことはありますか?

松原:見てもらって一緒に楽しんでもらえるようなものや、作品を見て、あっこれわかると共感できるものをつくりたいです。具体的にはまだわかりませんが、鑑賞者の気持ちになって、客観的に自分の作品を見ることを心がけたいです。