ジョブンヒ×スウシウ
⼈⽣の異なるステージの中で“⼀旦⽌まって考えること” “⾃分の⼼からの声を聴いてみる” この⼆つは⼤切だと思います。(ジョ) ⼤学を卒業しても⾃分なりにやりたい仕事を⾒つけられなくて不安でしたし、既に就職した友達からの仕事環境への考えもほとんどネガティヴですから、焦ってて適当に就職よりも学業を続きたいという声が⼼に響いていました。(スウ)
ジョ:最初回のインタビューなんで、緊張しても楽しみましょう。私達は⼀⼈で⽇本に勉強に来て、初めての⼀⼈暮らしです。先の話しを聞きたらスウさんは⼤学が杭州にありますよね、ご両親と⼀緒に暮らしていますか。
スウ:そうですね。⾼校時代から家族と離れて誰も知らない杭州に⾏きましたが、⼤学の終わりまでは寮に住んだり、友達と部屋を借りたりしていました。ですから、引越ししたこの数⽉は本格的に⼀⼈暮らしをはじめました。なんか東京に⼀⼈暮らしをすると、⽇常の細かいところまでは⾊々配慮されると感じていますね。例えば、スーパーに⼀⼈分の野菜を売っているとか、お店には⼀⼈のためのカウンター席があるので、⼀⼈でも全然寂しさや不便を感じなく、むしろ楽しくて、⾃由を満喫できます。ジョさんはどうですか。
ジョ:上海はなんとなく東京に⽐べて多くのところが似てると思います。⽇本に⼀⼈暮らしの⽣活は私にとって誰かのこともう我慢してなく、⾃分の好きな⽣活のスタイルを従えます。その点から考えると、⾃由に感じながらちゃんと⼼の声に⽿を傾けます。
スウ:ジョさんは⼤学で勉強した専攻と違った領域で就職したらしいね、どうしてですか。何年間もその仕事をしてきたのに、また学校に戻りたくなったきっかけはなんでしょう。
ジョ:なんか⼈⽣の異なるステージの中で“⼀旦⽌まって考えること” “⾃分の⼼からの声を聴いてみる” この⼆つは⼤切だと思います。誰でも道に迷い、⼈⽣の⽅向を失う時はあります。私も⼤学卒業後で半年間、⾃分のやりたいことが明らかになるまで、⼀⼈旅に出ました。その後就職をし、何年か働きましたが、だんだん不満が溜まり、前へ進む⼒が尽きてきてしまいました。そこで、⼀旦仕事をやめ、将来の⽅向性を探るために、また学校へ戻りました。
以前の職場では、ビジュアルマーチャンダイザーという、ファッションというより空間の飾りつけとかビジュアルに関する企画を担当する仕事をしていました。⼤学院では、これと同じ分野の勉強を続け、また他の分野の知識と組み合わせるとどうなるのか、ということを試してみたいと思っています。

スウ:この決⼼はかなりすごいですね。私の身近な⼈がほぼ安定な⽣活を求め、変化を怖れていて、不満があっても我慢しようと思っちゃうからです。実は私も卒業してから半年ぐらい美術館でインターンをしたが、先がはっきりとわからなくて辞めました。さっき⾔った⼀⼈旅が⾯⽩そう、教えてください。
ジョ:何よりも⾯⽩く冒険的な経験でした。⼀⼈でバックパッカーとして、随分遠くまで旅をしました。40時間も列⾞に揺られて都市から都市へ移動したり、男性だらけのユースホテルを泊まったりと、緊張もしましたけど、割とエキサイティングな経験でした。こうした旅を、半年間続けました。その結果、しきたりどおりの⼈⽣よりも、もっと違うことを試してみたいと思い、思い切って⽇本への留学を決意したのです。そういえば、⼤学院の話に戻って、鈴⽊ゼミを選んだ理由はなんですか。
スウ:鈴⽊先⽣を狙って⽇本に来ました(笑)。⼤学の時は「芸術エンジニアリングとテクノロジー」というコースにいたんで、先端的な技術やメディアを⽤いた作品を求められました。でもそれは全然苦⼿で、⼿作りインスタレーションとか、本を作るとかのほうが⾃分に合うと思いました。その時偶然に鈴⽊先⽣のツイッターにのせた路上観察や⽇常観察みたいな写真を⾒て「これだ!」と興奮してしまいました。ほかの作品も調べれば調べるほど共感が溢れたので、受験に来ました。あと、⽇本に留学すると、研究計画やテーマを書かなければいけないので、今までの考えを整理するきっかけにもなれるじゃないかと思いました。で、ジョさんは?
ジョ:へえ〜そうだったんだ。去年ムサビのオープンキャンパスで、鈴⽊先⽣と初めてお会いし、⾃分の研究と作品について相談しました。先⽣からのご意⾒は⾮常にシンプルだが、強⼒なものでした。後⽇、先⽣の作品をウェブで拝⾒しましたが、⾒れば⾒るほどとても⾯⽩く、鈴⽊先⽣なら、私の考えを誰よりも理解してくれるだろうと思い、先⽣の⽣徒になりたいことにしました。
研究計画の話を戻りますが、スウさんから窓という⾔葉を聞いて、すぐに⾵景やフレームが浮かびました。これは研究主題として、特別な意味があると思いますが。。。
スウ:そう…ですね…「窓」は⾃分のこれまでの作品の中から抽出した共通のキーワードです。作品を挙げて説明すれば、卒制で使った素材は綿あめでしたが、普段のカタチから空中に踊っている様⼦に変えるように機械を⼯夫しました。その機械を操り、綿あめとのパフォーマンスを⾒せました。観客たちが最初に⽬の前のモノは何が全くわからないかもしれないが、嗅覚や触覚などますます多くの身体感覚を動かしたら作品の密がわかるようになります。既に身近にあるモノの別の側⾯から再認識することはコンセプトなんです。そして、「窓」という⾔葉を使ったのは、「窓」からみる⾏為は額縁があるから、そのまま⾒るとは違って、もっとピントが合い、対象の隠れた側⾯が⾒えます。つまり「窓」は「⾒⽅が変わる」という定義が⾃分の中にあるからです。とはいえ、「マド」は他に豊かな意味も含まり、もっと解読できる可能性があるので、今後の⼆年間を渡って探そうと思っています。いよいよ鈴⽊ゼミが始まって、実際に授業を受けてどう思いますか?
ジョ:やっと始まりますよね。中国の⼤学に⽐べて全然違いますよ。こちらの⽣徒たちは普段から積極的に考えたり⾏動したりしていて、びっくりしました。先週、みんなの作った企画案と企画名を発表した時、それぞれの異なる観点から⾃分の案に考え直させることができると気づきました。その上、鈴⽊先⽣も⾊々な意⾒などを教えていただきまして、まるで別の世界に⼊るようでした。
スウ:別の世界(笑)私もそう感じました。ジョさんは⽇本を選んだ理由はなんですか。
ジョ:ずっと前から⽇本⽂化に趣味を持ってます。あるアメリカの作家の<菊と⼑>という本が⽇本⽂化の両⾯性を書いていて、侘寂という⽂化から表現された⽣命の真実に感動しました。同じように、その真実は先⽣の作品の中で含まれていると感じます。
スウ:鈴⽊先⽣の作品の真実性についてどう考えていますか?
ジョ:そうですね。去年札幌で、先⽣の新作”氷の⼈”を披露されまして、氷で⼈の形を作って、スポットライトの前に置くと、だんだんと溶けて、氷から⽔になってしまいます。このプロセスは、まさに⼈間の誕⽣から死亡までの⽣命⼒ではなかろうかと思いました。しかも、⽔・氷・⽔の変化を考えると、⽣命あるいは真実などを再認識させるという影響を私に与えてくれました。そういえば、スウさんにとって、⼀番お気に⼊りの鈴⽊先⽣の作品はどれですか。
スウ:鈴⽊先⽣の作品を本で⾒たことが多かったが、実際に体験したことは少ないです。なので最近⼀番印象に残っているのは実際に体験できた『まばたき証明写真』というインスタレーションです。普段証明写真を撮る時に、⽬を開いてとか眉⽑を隠しないとか⾊々要求されるじゃないですか。でもなぜ⽬が閉じている写真は社会に認められないでしょう。⼈間がまばたきをする瞬間こそが⽣命⼒のある証拠じゃないかと思いました。それに、⽬を閉じた世界はどういうだろうなど、鈴⽊先⽣ならではのファンタジーが含まれて、とてもインスパイアされました。

ジョ:次から次へと続く勉強をどう思いますか。何年も続けるのは⼤変ですか。
スウ:ううん〜むしろよほど楽しんでいる。たぶん⼤学の専攻に⼗分な熱情を注げなくて、知識欲がまだ満たされていないかな。(笑)あと、⼤学を卒業しても⾃分なりにやりたい仕事を⾒つけられなくて不安でしたし、既に就職した友達からの仕事環境への考えもほとんどネガティヴですから、焦ってて適当に就職よりも学業を続きたいという声が⼼に響いていました。
ジョ:私はそう思いますよ。けど⼤学を卒業したばかりの学⽣さんたちは社会に適応するのに少し時間が必要ないじゃないですか。
スウ:やはりそうですよね。⼈間関係難しいな!(笑)でも⽪⾁なことに、⼤学院に⼊ったら就職したいという気持ちが上がってしまいました。⾃分の考えを他⼈に⾒せたり、評価をもらったり、早く⼀⼈前になって、社会に認められたいね。
ジョ:ははははは、新型コロナが早く終わりますように祈ります。コロナが落ち込んだら、バイトをして学校に⾏ってイン
タビューできることを楽しみにしましょう。
スウ:そうそう、これからの⽣活を楽しみしていますわ。